2013年4月19日金曜日

グレーよりもグレー

昔、ケンタッキーは、おばさんが家に遊びに来るときに買ってくるときしか、食べられなかった。
家族はみんな喜んだけど、わたしは骨つきのチキンが苦手で、いつもじょうずに食べられなかった。
今は、170円という値段で骨なしのチキンが買えて、すきなときに食べられる。


お気に入りのグレーのジャケットがないことに気づいたのは電車の中で、もうすぐで目的地、時間はぎりぎりのところだった。すぐに引き返すこともできなかったので、ぐるぐると記憶をたどり、たぶん本屋に寄ったときに落としたんだろう、というところまでは推測した。
大きなショッピングセンターの中の本屋さんは、通学定期があるときは本当によく寄っていた。大きな本屋さんに行くと、いつだってわくわくする。
ショッピングセンターのインフォメーションセンターに電話をして、忘れ物が届いていないか聞く。
忘れ物の特徴を聞かれ、グレーのジャケットで、ボタンがたくさんついている、ということしか言えなかった。
まだ届いていないようで、見つかったら電話をすると言われた。

そのジャケットは、はずかしいくらい全然高価なものではなくて、何年か前に、地元のお店のセールで売れ残っていたものだ。
色違いのベージュと迷っていたら母親に、春だから明るい色のほうがいい、と言われて、ベージュのほうを買った。
でも、どうしても忘れられなくて、後日、グレーのほうも買いに行ったのだ。
(両方買えるくらい、本当に安かった。たぶん元値の半額以下で売っていたんだと思う)
それ以来、ワンピースのときもデニムのときも、本当によく着ている。

本屋に行くとき、わたしは大きなボストンバッグとショルダーバッグを持っていた。少し歩くと暑くなって、ぬいだジャケットをボストンバッグにひょいと乗せて歩いてしまったのだ。
ああ、戻って来なかったらどうしようどうしよう、あんなにすきだったのに。
でも、自分の不注意が原因だから誰も責められず、とてもかなしかった。電話もない。

ショッピングセンターの最寄りの駅にも何回も電話して、警察署のホームページも検索して、それでも見つからなかった。もう無いかもしれないな、と思ったけれど、どうしてもあきらめられなくて、もう一度ショッピングセンターに電話した。
そうしたら。
あったのだ。やはり本屋に落ちていたそうで、ショッピングセンターで預かってくれていた。
取りに来るのは後日でもかまわない、と言われたけれど、わたしはすぐに取りに行くことにした。
片道一時間以上かけて、グレーのジャケットに会いに行った。
見つかって安心したらお腹がすいて、ケンタッキーを一つ買って食べた。


無かったらどうしよう、と思っていたけれど、心のどこかではきっと見つかると思っていたのだと、あとから気づいた。見つかるところしか、イメージできなかったのだ。
もちろん、自分のいいように解釈しているといえばそうなのだけど、なるべくしてなった結果のような気がする。
具体的にイメージできることは実現する、と指導教員の先生はよく言うけれど、本当にそうだと思う。

決して、時間があるとは言えないこの時期に、わたしは何をやっているんだろうとも思うけれど、こだわってよかったな。見つかってよかった。
今、グレーのジャケットは、わたしの部屋のハンガーにかけられて、おとなしくしている。

2013年4月1日月曜日

新しいことをはじめましょう




ブログ、を書くのが久しぶりで、とてもどきどきしています。
こんばんは、泉かなえです。
まだ少し寒いですが、4月だし、桜も咲いているし、何か新しいことを!というわけで、ブログをはじめます。

これは突然思い立ったわけではなくて。
少し前から、なかなか言葉が出なくなっていました。短歌も、俳句も、日記も。
このままじゃ、何かいやだ!と思って、高校生のころに書いていた文章を久しぶりに読み返しました。
部活帰りの電車でぽちぽちと携帯で書いては、ブログに載せていたことを思い出しました。
うまいとか、よくわかるとか、そういうことではなく、他者を想定して書くこと、書く意識で毎日を過ごすこと。
そんなふうに、また過ごしてみたいと思うようになりました。

とにかく、難しいことは抜きにして、まずは書いてみようと思います。
これからどうぞ、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。