2013年10月20日日曜日

あと10分で

電車にゆられる。新宿は予想以上に遠い。
さっきから、数えきれないくらい、電車の扉が開いたり閉まったりしている。

会うまでの時間たっぷり浴びたくて
各駅停車で新宿に行く

(俵万智 『サラダ記念日』1987年)

新宿に行くときに、この歌を思い出すことがある。
初めて『サラダ記念日』を読んだのは、中学生のときだった。たぶん、初めて読んだ歌集だったと思う。
国語便覧に載っている俵さんの短歌は全部ノートに書き写してしまい、市立図書館に歌集を探しに行った。
新宿は、中学生のわたしには遠い場所だった。でも、誰かに会いに新宿に行くということが、なんだかとてもうらやましくて、かっこよかった。

一年くらい前、友人と上野で待ち合わせをした。
大学まで一時間半かけて通学していたので、都内はどこへ行くにもそれくらいの時間だと思っていた。そう思っていれば、都内で待ち合わせをして、遅刻することはあまりない。
行ったことがない場所で待ち合わせをするときは、事前に調べる。
上野までの乗り換えはわかっていたので事前に路線を調べることはしなかった。電車に乗ってから何となく到着時間を調べてみたら、上野には一時間くらいで着くことがわかり、急に不安になった。
なんていうか、人と会うための気持ちの準備時間が足りないのだ。
電車では本を読んでいることが多く、その世界にどっぷり浸かってしまうと、現実世界に戻ってくるまでに時間がかかる。
人と会うために必要な時間が、わたしは一時間半なのだとぼんやり思った。
というか、到着時間を逆算して、少しずつモードをチューニングしている、という感じかもしれない。
音楽もそうで、到着次第気持ちを切り替える!というときは待ち合わせ時間が近くなると、Perfumeを聴いたりしていた。キリンジやGRAPEVINEは、なんとなく違う。
わたしは、音楽にも左右されやすい。教育実習のときは、毎朝Perfumeを聴いて出勤していた。体のなかのリズムが、前向きになる。


もう、新宿に行ってもどきどきしなくなった。
それは、新宿の思い出が増えてきたからかもしれないし、別の理由かもしれない。
本日お会いする人、お会いしましょう。楽しみ。
あと10分で、新宿。

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